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米イージス艦衝突/【問】日米安保条約に基づき在日米軍の権限などを定めた条約は何?

ニュース概要

www.sankei.com

静岡県伊豆半島沖で米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を拠点とするイージス駆逐艦フィッツジェラルド」とフィリピン船籍のコンテナ船が衝突した事故で、7人全員の遺体が見つかったと米主要メディアが報じた。第3管区海上保安本部(横浜市)も18日、イージス艦内から複数人の遺体が見つかったと発表した。米海軍から得た情報だといい、遺体は事故で行方不明になっている乗組員7人のうちの一部とみられる。

事故の経緯

16日:アメリカの艦船・イージス駆逐艦フィッツジェラルド」が神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地を出発。航路は南方向とみられる

同日夕:コンテナ船が名古屋港を出発。17日に東京湾につく予定だった

17日午前1時半:コンテナ船が右に急旋回。イージス駆逐艦と衝突か

同午前2時20分:コンテナ船が海保に「衝突した」と通報

現場はどんな場所?

事故現場は、船が多く行き交う国内でも有数の混雑海域でした。

1日に数百隻もの船が航行しています。

潮の流れが速いため、地元漁師が「海の難所」と呼ぶほどでした。

事故の状況は?

損傷を受けたのは、イージス艦は右舷(船の右側面)中央部、コンテナ船は船首左舷(左側面の船首近く)でした。

2船は「同じ方向に進んでいた」という情報があり、衝突の直前にはイージス艦の右側にコンテナ船がいたとみられます。

イージス艦がコンテナ船を追い抜こうとしていたのか、それとも前を横切ろうと指定なのかは明らかになっていません。

捜査の焦点

海上での事件・事故は、海上保安庁(海保)が捜査します。

今回の事故は米海軍のイージス艦とフィリピン国籍のコンテナ船の衝突ですが、日本の領海内での事故のため海保が原因を究明する役割を担っています。

海上での運航ルールを守らなかったとして、「業務上過失往来危険」容疑を視野に捜査していきます。

捜査の焦点は、「どちらの船に回避義務があったか」です。

海上衝突予防法では、2隻の船が進路を横切る場合、相手を右に見る船に衝突を回避するために対処する義務を課しています。

捜査のハードル

日本の領海内で発生した事故ですので、海上保安庁に捜査権があります。

ただ、今回の事故当事者は米海軍のイージス艦

そこには「日米地位協定」という高い壁があります。

協定では、公務中の犯罪についてはアメリカ側が「一次裁判権」を持つと決められています。

一次裁判権とは、事件を最初に捜査して事実関係を明らかにし、裁判する権限です。

今回はイージス艦は公務で航行中だったため、この権限はアメリカにあります。

一方で、「日米地位協定に伴う刑事特別法」には、日本の法律で罰せられる事件については「捜査できる」と規定されています。

つまり、日本も一般的な海上での事故と同様に捜査できる、ということです。

しかし、米軍の「財産」に対する強制捜査にはアメリカの同意が必要。

高い性能を持つイージス艦は、いわば「軍事機密のかたまり」です。

アメリカにとっては、同盟国の日本であっても機密情報を知られる訳にはいきません。

海保はアメリカに捜査のための情報提供を依頼していますが、アメリカが協力する見込みは低いのが実情です。

このため、海保の捜査により事故原因を究明するのは困難を伴うのです。

【問】の答え

【答】日米地位協定

日本で活動する米軍に施設を提供する方法、アメリカ軍人の日本国内での権利などについて定めた条約です。
アメリカ軍人が仕事中でない場合や、米軍施設の外にいた場合の犯罪については、日本に第一次裁判権があります。

今回の衝突事故では、アメリカ海軍は公務で航海中でした。

つまり、第一次裁判権はアメリカにあり、日本は捜査上弱い立場にあります。